退屈な神様がした悪戯




 20××年、○月◇日。平成の時代に、鈴木愛梨という少女がいました。容姿も性格も、どこにでもいるような普通の少女です。強いて言うなら、ポジティブな思考と少しばかり強い我の持ち主。けれどそんなもの、珍しくも何とも無いものでしょう。
 そんな少女はある日、とある神様のきまぐれで、ぽーんと異世界に放り出されてしまったのです。そう、教育番組で有名な彼らのいる世界ですよ。
 勿論彼女は戸惑ったことでしょう。彼女は特に異世界にトリップしたいと思っていたわけではないのですから。それに彼女はその教育番組を小さな頃に見ていただけで、成長してからはとんと目にしなくなっていたのです。ぼんやりと小さな三人組とその教師達の面影が頭の中に残っていただけで、そのほかの登場人物など全く知識にありませんでした。もちろん、時代背景だってそうです。
 でも彼女は、好意的な教師や生徒達がその存在を歓迎したことにより、あっさりとその学園に居場所を確保し、職を手に入れたのです。乱世の時代という時代背景を思うと、とても幸運だったと言ってもいいでしょう。しかも彼女は、空から降りてきたために「天女様」だなんて呼ばれています。
 彼女は自分がそれほど美しい容姿を持っているわけではないことを自覚していましたから、悪い気はしないながらもそれに甘んじる事もなく否定しました。けれどどうでしょう。割り当てられた部屋にあった鏡をのぞいてみると、ごくごく普通の顔立ちだったはずの彼女の顔は、美少女といっても過言ではないものに変化していたのです。茶色の髪は亜麻色のふわふわな髪に、薄茶の瞳は飴色の瞳に。白い肌に白い歯にぷっくりとした桜色の唇に大きな二重の眼、細く伸びやかな手足にふっくらした胸元と腰回り。くびれたウエスト。それはそれは可愛らしい少女に。
 彼女は驚くと同時に歓喜しました。以前の自分の顔は嫌いではありませんでしたが、女性は永遠に美しいものが好きな生き物なのです。そして彼女に近づいてくる男の子の多い事! 彼女はすぐに、自分が逆ハーヒロインの立ち位置にいる事に気付きました。
 だからこそ彼女は、そのポジティブ思考と少しばかり強い我故に、自信を持ち、自分を嫌う人はいないと思い込んだのです。ぶっちゃけてしまえば、調子に乗り始めたのです。
 そしてそんな彼女は、暢気に過ごしていたある日、一人の男に恋をしました。それが終焉へのカウントダウンとは知らずに……。自分に好意を寄せている男を選べばよかったのに。いいえ、選んでいても、結果は変わらなかったかもしれませんが。



 え、私が誰かって?
 名乗るほど者ではありません。
 いうなればそう、ただの傍観者ですよ。



 ようは体格も容姿も変わったのに、以前のままの振舞をするから齟齬が生じていたと。そういう事です。(それを文中で表現しろよという話ですね、すみません) 


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