君があるべき場所





 小平太が戻ってきた。しかも今は現代から来たあの女に警戒心まで抱いている。
 あまりにも簡単に事が運んだ事に、は笑い出したい気分だった。今回のの負傷は全てが全て、この為というわけではなかったが、一応目的の中に含まれていたのだ。忍たまの六年としては他の人間にあまり変化が無いと言うことは残念でならないが、個人的には小平太が戻ってきたらもう他はどうなろうと構わない気がした。
 小平太はある意味特別なのだ。表に出してなどやらないが、小平太やに近しい人間には充分に知れているだろう。そういう態度を、今までに取ってきた自覚がにはあった。
 そうだ、その近しい人間といえば。の枕元に座り込んで唸っている小平太をちらりと見上げ、一人の後輩の顔を思い出す。あまりにも濃いキャラと小平太が気に入っているという事で覚えていたのだ。確か、体育委員会の平滝夜叉丸といったか。
 そう、そうだ。そういえば、体育委員は今機能が停止しているのではなかったか。金吾が滝夜叉丸の顔が暗いと、金吾自身が暗い顔をして落ち込みながら呟いていた。

「小平太」
「ん、何ちゃん?」
「お前、委員会はどうした?」
「いいんかい……?」

 きょとんと瞬いて、何かを思い出そうと視線を彷徨わせる。そして、ざあっと、血の気の引く音が聞いてきそうな勢いで青ざめた。

「わ、私、委員会を、忘れて、いた……?」

 震える声で呟き、確認を取るようにへと視線を向ける。それに一つ頷いてやり、追い討ちをかけるように委員会の現状を教えてやる。

「金吾から聞いた話だが、活動停止状態だそうだ」
「……金吾たちは、今、どうしてるか知ってる?」
「金吾と四郎兵衛と平は活動が無くても集合場所には行っているらしい」
「三之助、は?」
「さぁな。おおかたテンニョサマの所だろう」

 小さく息をついて、さてお前はどうする、と視線だけで尋ねる。
 小平太はと入り口を交互に見て、泣きそうな顔をした。今すぐに行きたいけれどもの傍を離れるなんて、と丸い目が雄弁に語っている。はそっと目を細める。

「行ってこい」
「でもっ」
「もう少ししたら兵助も来る」
「うぅ……」

 泣きそうな顔に、眉間に皺を寄せ、口を引き結んで唸る。これだけ言っても傍を離れようとしない小平太に、は優しい苦笑を浮かべた。行きたいと顔で主張をしているくせによく頑張るものだ。

「ならば命令だ。行け」
「うー……はい」

 頷きながらも後ろ髪を引かれるのか、ちらちらと振り返りながら保健室を出て行く小平太。けれども保健室を出て扉を閉めた瞬間、物凄いスピードで体育委員会の集合場所へと走り出した事を気配で感じ取り、はくつくつと咽喉を震わせて笑った。


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