0.終焉
――ああ、死ぬのか。
身体を浸すほどにあふれ出た血を横目に、は酷く淡々と思った。
交通事故が死因だなんて、なんだか間抜けだ。自分的に。
だんだんとぼんやりしてくる意識の中でそんな事を考えているうちに、目がかすみ、鬱陶しいほど騒ぎ立てている周囲――いや、それが正常な反応なのだろうが――の音も聞こえなくなった。
ああ、へたれな兄貴と何気にシスコンだった弟が泣くな。きっと周囲の目も憚らず大号泣してくれることだろう。
いつも優しくはちゃめちゃな事をやる自分を見守っていてくれた父も、我が家の権力者として君臨している母も、きっと泣かせてしまう。
何とまぁ親不孝な事だ。
親より一日でも長く生きるのが子供の勤めだって言うのに。
まだまだやりたい事もたくさん有ったってのに……。
深々とため息をつきたくても、身体は既に呼吸すらもままならない。
心の中でごめんなさいと呟いた次の瞬間、まるでテレビの電源を消すかのように、ぶつんと音を立てて意識が途切れた。
、享年二十と半。
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