捕食の法則



 緩やかに波打つ髪が、布団の上に散って畳にまで流れている。髪がかかる頬は普段よりも白く、目尻には涙の後が残っていた。体中には鮮やかな赤い痕が散らばり、四肢は力なく投げ出されている。
 疲れているのだろう。当たり前だ。よりも一回り小さな身体で、初めて男を受け入れた後なのだから。蹂躙されたと言っても過言ではないほど、手加減できなかった覚えがある。それほどに、触れた肌は心地よくに馴染んだ。しかし、それを後悔してはいない。それほど倫理観のある人間ではないと、自身よく自覚していた。しかしこれは。

「ヤバイ」

 呟き、頬に手を伸ばす。しっとりと手に吸い付くような感触。指先を滑らせて、柔らかな髪をすいた。その感覚がくすぐったいのか、兵助は身じろぐ。その拍子に掛け布団がずれ、潤んだ肌がのぞいた。

「癖になりそうだ」

 肌も髪も、自分から迫ってきたくせに恥らって目を潤ませる様も、快楽と苦痛に喘ぐ姿も、乱れ方も、全てがの中の欲という名の獣を揺り動かした。体の相性も、過ぎるほどに良い。乞われるままに喰いつくしたが、実際に喰われてしまったのはの方なのかもしれなかった。突き動かされるままに、執着心が芽生えたのを感じた。
 どうにも、手放せそうにない。

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 と久々知のハジマリ。この二人はまず体の関係ありきです。そして三年かけて互いにずぶずぶと抜けられない所まで嵌っていきます。久々知は喰われた時点でそれを自覚していますが、は己の中ではっきりさせるまで三年かかります。本気で人を愛した事なんかない上に、無駄に経験豊富だから。
 久々知が迫ってくることがなければ、は久々知に手を出すことはありませんでした。一応なりに後輩は大事に思っているし、まともに可愛がりたいと思っているから。