性的・暴力的表現注意!



































あなたととけあうよろこび





 焦っていたから、そういう方法を取ったのは俺だったけど、正直から気持ちを返してもらえるとは思っていなかった。だって、受け入れたのは俺でも身体を重ねたのは無理矢理で、触れるのも俺からだけで。その手段をとった後で、失敗したと、少し後悔した。
 けれどが強く拒まないのをいいことに、俺はずるずると関係を続けていた。身体を繋げずに心を繋ぎとめる方法なんて、知らなかったから。何時突き放されるか不安で、でも触れないで居る事なんて出来ないほど好きで仕方が無くて、全てを擲つように差し出していた。
 だから、初めて契りを交わす時にから触れられた時は、何が起こっているのか解らなかった。腕に触れられたと思った瞬間、引き倒されて、くるりと回った視界に次に映ったのはの顔と彼の背後にある天井の木目で。の指がくすぐるように頬に触れたときに、やっと事態を把握した。
 布団に押し付けられた腕、絡め取られた足、背には固めの布団の感触。押し倒されて、組み敷かれた。たったそれだけの事なのに、こんな体勢もがこんな行動を取った事も何もかも初めてで。熱の篭った闇色の瞳にさらされている無防備な自分が、恥しくて仕方が無かった。顔どころでなく、体中が熱くなるのが解る。

「あ、の、?」
「ヤられっぱなしってのは性に合わないし」
「う、うん……」
「だから今日は俺の好きにさせてもらおうと思って」
「え、あ……」
「イイ声で啼いてくれよ」

 欲情に揺れる瞳に、艶やかに浮かべられた笑み。匂いたつような男の色気に中てられて、何を言われているのか半ば理解出来ないままにこくこくと頷く事しか出来なかった。
 深く口付けられて、緊張のあまりがちがちになってしまった舌を絡め取られる。その間にも手際良く身につけている衣服を剥ぎ取られて、あっという間に脱がされてしまった。指が、唇が、舌が、全身を這うように愛撫する。触れられた所から痺れるような快感が走って、まるで全身が性感帯になってしまったような気がした。知らなかった。好きな人に触れられることが、こんなにも嬉しくて、心地好いだなんて。
 唇からは女のようなすすり泣くような嬌声がひっきりなしにもれて、恥しくて仕方が無い。思わず手で押さえようとすると、の手に絡め取られ布団の上に縫い付けられた。

「やっ…ぁ…………!」
「声、聞かせろ」
「ん、ぁ…はずか、し……」
「今更だろう……?」

 耳に直接流し込まれた低い声が媚薬のように身体の中を浸食する。快楽に震える体に、が機嫌よさそうに咽喉を鳴らした。だからの望むままに、咽喉を鳴らして、啼き声を上げて。
 けれど、指が身体の中に差し込まれた瞬間、溶け掛けていた体が強張った。身体の構造上そこに快感を感じることの出来る場所があることは知識の上では知っていたけれど、今までの交わりでは痛みしか感じたことが無かったから。それでも、が気持ちいいと言ってくれるだけで満足だった。けど、やっぱり痛みを感じていた身体は正直で。
 力の入ってしまった身体を宥めるように、肌に唇が落とされる。そんな風に気遣ってくれるの心が嬉しくて、必死に身体から力を抜くように息を吐いた。身体の中をの指が探る感覚が至極鮮明に解って、羞恥により身体が熱くなる。そして腹側の一点を強く押し上げられた時、まるで電流が走ったような衝撃が脳天を突き抜けた。

「ああぁっ!」

 一際高い嬌声と共に身体が跳ね上がる。それが自分の身体の反応だとは信じられなくて、驚いているにも気付かずにうろたえた。

「い、今の、何……?」
「前立腺」
「うそ……」

 その部分を刺激されることで快感を得ることが出来るのは知っていたが、こんなにも刺激が強いなんて。
 自分の身体の反応に戸惑っている間にも、機嫌の良さそうなは小さく口付けて同じ場所を刺激した。自分の意思とは無関係に上がる嬌声に、跳ねる身体。その刺激から逃れるようにもがいても、の腕はしっかりと俺の身体を捕えて離さない。恥しいのか嬉しいのか、自分の感情も感じる身体にぐちゃぐちゃになって、何がなんだかわからなくなって、ただただぽろぽろと涙が零れた。





 身体の奥や間接が痛い。咽喉がひりつく。
 目が覚めて最初に感じたのは身体のそこかしこにある痛みだった。寝ぼけた頭はその痛みの原因を綺麗さっぱり忘れていて、何で身体のあらぬ場所が痛んだり咽喉が痛いのか全く解らなかった。ぼんやりとした視界は白い。着物だと、ぼんやりとした思考が答を出す。そこに触れている手は暖かくて、擦り寄ると背中に回ったぬくもりに強く抱き寄せられた。視線を上げると、そこには少しつり上がり気味の目を閉じてあどけない顔で眠る。額にかかる黒い前髪だとか、案外長い睫毛だとかがカッコイイなとぼんやり考えた次の瞬間、一気に正常な思考が戻ってきて、頭に血が上ってきた。
 抱かれたのだ、に。
 一方的な行為ではなく、指を絡めて、吐息を溶け合わせて、身体の奥深くで快楽を分け合って、交じり合って。
 恥しくて、でもそれ以上に嬉しくて。咽喉と目の奥がかっと熱くなる。鼻の奥がつんとして、目の前がぼやけた。ぱちりと瞬くと、涙が流れる。涙の流れるままに、深く抱き込まれている胸に擦り寄った。

「へ…すけ?」
「ぁ、ごめ……起こした」
「ん、いや……泣いてるのか?」

 至極ゆったりとした動作で瞬くが、眠気の残るとろりとした瞳で覗き込んでどこか痛いかと聞いてくる。小さく首を横に振ると、背に回されていた手が頬に添えられて、涙の跡を指先が拭った。そのまま離れていこうとする手を捕まえて、頬を摺り寄せる。


「ん?」
「だいすき」

 こみ上げてくる泣きたくなるほどの幸福感に、目の端に涙を滲ませたままふわりと笑みを浮かべる。は眩しいものでも見るかのように目を細めて、そっと、触れるだけの口付けをくれた。



 モブ主Aのお題連載の「きちんとききかんりをしましょう」の久々知視点が気になるという方がいらっしゃったので、書いてみました。下手な裏表現も増やしてみつつ。モブ主Aでの視点とあまり変わらないような……(汗)
 とにかく、久々知はとっても嬉しかったんだよというのが伝わってればいいなと思います。