05: 小瓶



 透明で小さな小瓶。
 中に入っているのは淡いピンクのジャムで、それを光にかざしては眉間に皺を寄せた。

「これ、美味いのか?」
「さぁ?」

 アルバフィカも己の手の内にある小瓶――こちらは白っぽい――を覗き込んで、小首を傾げる。
 その仕草の愛らしさに内心感動を覚えながら、は手の中でころころと小瓶を転がす。
 二人の動作を見ていたロゼは、柔らかな笑みを浮かべた。

「気になるのでしたら、食べてみたらどうですか?」
「んー……今はいい」
「ぼくも」

 浅葱と濡羽の小さな頭が同じタイミングで横に振られる。
 ロゼは終には声を出して笑い、不思議そうに向けられる二対の瞳に小さく首を振った。

「まぁ、食べてみりゃわかるか」

 ぽんと空中に放り上げ、PKで机の上へと鎮座させる。
 アルバフィカも両手で掴んでいた小瓶をその横へとおいた。
 このジャムは双魚宮の薔薇園で世話をしている薔薇の花びらで作ったものだ。
 が持っていたものは主にピンクの薔薇で作られたもの、アルバフィカが持っていたものは白薔薇で作られたもの。
 薔薇のジャムなど一度として口に入れたことの無いが、つい先日ぽろりと零した「食べてみたい」という一言により、師や従者が咲きかけの薔薇を摘んで作ってくれた。
 何でこんなに甘いのだろうか。それがわかっていての一言ではあるけれど。
 お茶の時間にでも食べてみようと、は薔薇の数だけ作られたジャムの小瓶をつついた。