そんな歪んだ顔ですら
「君は彼女じゃない」
そう低く呟くアルバフィカの顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいる。眉間に僅かに皺を寄せ、色がなくなるほど花びらのような唇をかんで、花浅葱の瞳を潤ませて。
そんな彼に対峙しているのは自分だというのに、美人はそんな顔ですら綺麗だと、他人事のように思った。嫌になるほど現実味が無いのは、彼が現実離れした豪奢な美貌を持っている所為だろうか。それとも、今己の魂が入っている身体(入れ物)が他人のものだからだろうか。どっちにしろ、彼との間にはガラスが一枚存在しているようなものなのだけれど。
けれど嗜虐心は確実にくすぐられ、は胡坐をかいた膝に肘をつき頬杖をついて、彼を見上げた。話に聞く限り、この身体の持ち主ならば絶対にとりえない体勢だ。
「そりゃそうだ。私はこの子じゃない」
私以外にはあんたが一番よく知ってるでしょ?
意地悪く、にやりと笑みを浮かべる。これもまた絶対に彼女はしない顔。
そのまま首を傾げると、彼は息を呑んで顔をこわばらせ、白皙の肌からさらに血の気を引かせて踵を返した。その気配は荒く、薔薇の世話をしているときの穏やかさなどかけらもない。
浅葱色の髪を揺らして去っていく後姿にくすりと微笑を零し、は影にしている木を見上げた。
「美人はどんな顔をしてても美人だねぇ。そう思わない、マニゴルド?」
「やーっぱ気付いてたわけね」
「まーね。あの子は気付いてなかったけど」
「だろうな」
ざっと音を立てて降りてきたマニゴルドは、に同意しながらその横に座り込んだ。
「にしても、天下の黄金聖闘士をあの子呼ばわりかよ」
「精神年齢は確実に私の方が上だからね。それに私の方が強い」
「あんたに勝てる奴がいるなら見てみてーよ。で、楽しいか?」
「うん?」
「アルバフィカの奴苛めて」
「うん、すっごい楽しい」
今まで見たことのないような、輝かんばかりの笑顔を浮かべて、は思い切り肯定した。目にも眩しい満面の笑みに、マニゴルドはそっと視線を外し人一倍繊細な同僚に思わず同情してしまう。
「サド……」
「あっはっは、今更今更!」
外見に似合わぬ豪快さで、はマニゴルドの呟きを笑い飛ばした。
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何か、金髪碧眼の美少女に憑依した女主人公がアルバフィカに拒絶される夢を見ました。で、その後なんかくっついたみたいなんですけど、本体で移動した時には気付いてもらえず、傷ついた彼女は教皇(だと思う)に一言残した後建物を飛び出し、やっと気付いた彼が追いかけてくるという……。少女漫画もまっつぁおな展開でした。寒いよ、鳥肌がたつよ……!
でもまぁ見たんで書いてみました。頭の部分だけ。後は創作です。だって夢の中の彼女こんなさっぱりしたサドッ気のある子じゃなかったもん。でもちょっと書いてみたいかも。
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