幕は上がった覚悟を決めろ



「まず前提として、お兄様方にサガ様を討つことができますか?」
「……無理だな。アテナエクスクラメーションを使やどうにかなるかもしんねぇが」
「でも、それはしたくないのでしょう? ならば、わたくしが提案できる道は一つ。サガ様を支え、女神がお戻りになられるその時まで、聖域の存続に勤める事です」
「それは……」
「聖域は世界の国々に強大な影響力を持っています。それは多くの国が欲しがるほどの強大さ。その国々ににらみを利かせ、下手に干渉されないよう、彼らに取り込まれることのないように聖域を守っているのが教皇その方です。もしお兄様方にサガ様を討てたとして、教皇亡き今、誰がその地位につけましょう。お兄様方はまだ十を数えたばかり、射手座は死に、年長者は五老峰にいらっしゃる天秤座だけ」

 その言葉に、シュラはから視線をそらしたが、己の罪と向き合うように、すぐに視線を戻す。

「わたくしはネロやロッソや多くのファミリーに支えられているからこそ、ドンナの地位に立っておりますが、それもこの組織内だけのこと。聖域ほど大きな組織を統率し、淘汰し、列強国に睨みをきかせることがお兄様方にできますか?」
「無理だ」
「無理だね」
「無理だな」

 は、否定の言葉を返した彼らにひとつ頷いた。

「今現在、それが可能なのはサガ様だけでしょう。大きい組織ほど闇も濃い。神官よりも、聖闘士個人の方がお兄様方も信用できるでしょうし。けれどその道は、長く険しい道になるでしょう。そして、女神が帰ってくるまで聖域を守るためだとしても、結果的にサガ様の罪に加担することになります。多くの死を見つめ、多くの死を齎し、その先に待っているものは、きっと己の死でしかない。わたくしは若輩ゆえ、このような道しか思いつくことはできません。より良い道もまだあるかもしれません。五老峰におわすお方に助力を請うのもいいでしょう。お兄様方、どうしますか、どうしたいですか?」

 静かに見上げてくる五つ下の少女に、デスマスクたちは己の中で考えを巡らせた。
 確かに、今思いつけるのは、が示すその道のみだ。
 老師を巻き込む事はできない。彼は、来るべき聖戦に向けて、冥王を封じた塔の監視をしている。
 自分達を含め他の聖闘士たちは幼く、聖域を管理する事などまず無理だ。
 ならば、何年か後に死ぬ事になろうとも、サガの罪に名を連ねようとも、あの、小さな女神が帰って来るまでは。

「俺は、サガを助ける」
「私もだ」
「オレも、女神がお戻りになられるその時まで」
「腹を括りまして?」
「「「ああ」」」

 揃った三人の声に、は一瞬笑みを浮かべて、だがすぐに唇を尖らせた。

「だから聖域なんて嫌いですの。わたくしも微力ながらお手伝いさせていただきますけれど」

 その拗ねた声と表情に、三人は顔を見合わせて、久しぶりに声を上げて笑った。


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 また新しい主人公が生まれてしまった……。
 えー、彼女のデフォルト名はリコリス・フェッリ。デスマスク(ここでの本名はクラスター)の実の妹で、同じようなアルビノです。
 ビアンコ・ファミリーというマフィアのボスを五歳の頃から務めている鬼才。本当はデスマスクが組織を継ぐはずだったのですが、聖闘士に選ばれてしまったので、彼女が継ぐ事になりました。
 で、超の付くブラコン。この世で一番恰好いいのは兄だと真剣に思ってます。むしろ恋愛対象一歩手前? 兄妹じゃなかったら既成事実作ってでも絶対モノにしてるのに、とか思ってます。
 そしてそんな兄を取っていった聖域が嫌いです。女神も嫌いです。でもサガは嫌いじゃないらしい。(何故)
 ちなみにカップリングは蟹×魚で、REBORNとのコラボになる予定。
 きっと書ききれないだろうな、うん。